救助艇(WIDGEON12)船舶検査合格までの道のり

救助艇(WIDGEON12)船舶検査合格までの道のり

救助艇担当 太田

昨年の12月初旬頃には来期の構想が何かと話題になり、たまにはクルージングもしたいとか、練習だけではなくお遊びもあってもいいのではという声もあり、ならば安全を考え救助艇も必要かとの意見もあり、現在の2馬力のエンジン付きゴムボートではとても心もとないということで、もう少し本格的な救助艇を考えようというのが発端でした。
早速、現在あるディンギ―で汽船(動力艇)にできる候補としてWIDGEON12が上がり、申請してみようと数名で日本小型船舶検査機構に向かい話を伺い、帰りの車の中ではエンジンも5馬力は必要とか、話はどんどん盛り上がり、あまり乗り気でなかった私がみんなで協力するからといつの間にか検査申請の担当者ということになってしまいました。
まずはエンジン(5馬力)の搭載及びテストとその際の喫水状況の確認から始まりました。

(写真参照①)

一番の問題は、汽船(動力艇)で申請するには船首甲板をつけなければならず、しかも基準を満たすことが条件です。
既存のものはありませんので自作しなければなりません。
しかも、ヨットのシーズンが始まる前(3月)までに許可を取らなければなりません。
1月に入り、船首甲板をどのように作るか参考になりそうな船を探しなしたがFRP製のものが大半で、作らせればかなり費用も掛かりそうなので加工しやすい合板で作成することにしました。
相棒のS氏とカインズホームに行き、すぐに目についたのが耐水性のあるパネル合板で、1.8mの板を2分割しても軽四輪では頭に当たるくらいの長さになり、揺れるたびに頭をたたかれながら山路邸に運び込みました。
またS氏はDIY(日曜大工)が趣味で、立派な工具を持っていて、腕も確か・・だと思われます。取り敢えずおおざっぱに裁断してみましたが、まったいらの板では船首のカーブが出せず、わきには大きな隙間が空いてしまい、加重をかけ曲げてみてもすぐに元に戻ってしまい、曲げることをあきらめ小さくして解消しようということになり、大きな合板がどんどん小さくなってしまいました。破材の方が大きいかも?
でも、自作にしては結構かっこよく出来たと思っています。(自画自賛)
(写真参照②)


かなり丈夫に作ったつもりですが、重量制限は60Kg以上の人は踏みつけないでください。
もちろん私は足をかけることすら厳禁です。
1月には、改造や法定備品の手当てもでき、申請書の提出とテストの許可をもらうことになり2月5日には第1回目の測度検査を山路邸まで出張していただき、3月中の臨時航行の許可をもらうことが出来ました。
(写真参照③)


いよいよ2時間耐久テストになり、これはわれわれで2時間以上の耐久試験を行い、報告書を提出するものです。
3月8日午前9時山路邸集合し出艇準備 法定備品点検 エンジン装着
そして逗子海岸へ
快晴 波穏やか 北東の風3~4m
9:50 浜より離岸 フルスロットルで赤灯台 森戸海岸沖を旋回し戻ることに。
大きな声では言えませんが、あろうことか11:20 鐙摺沖でガス欠(故障ではありません)。
オールで漕ぎ始めたら、運よく鐙摺港から出てきた人のよさそうな漁師の方が声をかけてくれてそのまま引っ張ってもらい無事逗子海岸に着岸でき、事なきを得ました。
約1時間30分のテストでした。
(救助艇が救助される状況に、暑くはないのに汗)
(写真参照④⑤)


(教訓)
車と違い船外機の燃費は悪いというかよくわからない。
したがって予備タンクは常に必要ということです。
走行は機関とも順調 90%フルスロットル
エンジン旋回が重い(のち整備し改善)

テスト2回目
3月9日 前日同様 快晴 波穏やか 東の風3~4m
シーホース(877)と並走
燃料満タン、しかも予備タンクも持ち万全の態勢で臨みました。
途中、救助の練習(?)もしてだいぶ余裕が出てきました。
無事に2時間のテストは終了

3月11日には検査結果を検査機構に連絡し、最終検査の日程を仰ぐことになりました。
通常、月水曜が出張予定とのことであったが、調整して連絡をもらうことになり15日(金曜日)9時葉山新港にて行うとの通知をもらう。
前日の14日はあらためて備品確認、燃料補給(混合作成)午前8時過ぎには持ち出せるよう準備し引き上げました。

3月15日(金曜日)いよいよ検査当日です。
午前8時には山路会長宅にS氏と待ち合わせ、また平野代表の手伝いに来てくれて逗子海岸に運び、前日の準備が功を奏し一発でエンジンもかかりS氏の操縦で青空のもと、葉山新港に向け出発です。朝の空気と澄んだ海水は最高の気分です。
(写真参照⑥)


約15分程度で新港に到着するころには平野代表はすでにバイクで先回りし、問題ないことを報告、予定より早く到着により事務所でテータイムを取ることが出来ました。
と、検査委員も早めに到着で、挨拶も早々に早速検査が始まりました。
だいぶ小さくなった船首甲板を測っていましたが無事クリアでき、喫水の確認等から定員は3名までとなりました。当方としては4名を期待していましたが、仮に片側に4名が乗ると浸水するという理屈だそうで納得いたしました。
いよいよ実走開始で緊張した面持ちのS氏の操縦で検査員1名同乗し、赤灯台の先まで走行試験が行われました。初めて外側から見ましたが2名が後方に乗るとだいぶ船首が上向いて見えます。S氏と検査員がどんな会話がされたのかは聞きませんでしたが、朝日を受けまだ誰もいない海原を気持ちよさそうにエンジンが響き渡り、10分ぐらいで戻ってきました。
(写真参照⑦)


検査員は書類にいろいろ記入しながら、特に問題もないようで、ほっとしながら全員で事務所に向かいました。
そこで、さすが我らの代表がうちの船を見ていってと「シーホース」とクラブの概要を説明し始め、さらに勧誘まではじめ、和やかな空気で事務所にて検査結果の講評を受けました。
18日には許可証を発送いただけることに相成り、またS氏と逗子海岸に向かい、海岸には既に代表が待っており3人で引き上げ、そこで用事のある代表と別れました。
代表も忙しい中、時間を割いて手伝ってもらいとても助かりました。
山路邸には山路ご夫婦が結果を楽しみにしてくれていて、合格をとても喜んでいただきました。
船をかたづけ、奥様に紅茶を入れていただきましたが、格別おいしく感じたのはS氏も同様であったと思います。
短い間でしたが、ここに至るまでには申請経験のあるTさんアドバイスや、エンジンや海岸でのテストなど多くの方のご協力の賜物と感謝いたしております。
救助艇があまり活躍というのはいかがなものかと思いますが、逗子セーリングクラブとしてはやはり安心、安全のためには必要な装備で、ますますこのクラブが良い方向に向かっていくものと確信しています。
そのうち、日頃の練習において代表がこのヴィジョンに乗り、船上から大声で指導する姿も見られるかもしれません。

以上、検査証書発行までの顛末記でした。
(写真参照⑧)

(追記)
1.燃料と燃費について
このYAMAHAエンジンは2サイクルのため混合油を作成し給油しなければなりません。
エンジン内タンク(2.8L)混合比率(ガソリン50:オイル1)ですが、わかりやすくガソリン4Lに対しオイル80㏄から100㏄を入れています。
特にこのテストを通じ感じたことは、救助艇(動力艇)の燃費についてです。
船外機には約2.8Lの燃料が入りますが、車と違いL当たりの走行距離は測れないということです。潮の流れやうねり、風等に大きく左右されまたスロットルの開閉度でも影響されます。
おそらく江の島(湘南港)まで片道満タンで少し残る程度で、5Lの予備タンクに4L+の混合油を入れ携行することは必至です。
ヨットは風がなくなれば動けませんが、動力艇はガソリンがなければ動きません。
しかし何時かは風が吹きヨットは動き始めますが、動力艇は全く動くことも出来ずただ流されるだけで基本ヨットの方が安全かもしれません。
しっかり予備点検と、万が一の連絡体制は絶対必要になります。
単独走行することはないと思われますが、乗られる方は十分ご注意ください。

2.取得した航行区域資格と可能水域について
航行区域につきましては葉山新港を起点にして沿岸5海里までとなります。
(5海里は、1852m×5=9.26km)
江の島(湘南港)に行くには問題ありません。検査員にも確認いたしました。
(写真参照⑨)

最後に
運転するに要する資格と資格保持者登録要請について
この船を操縦するには「2級小型船免許(ボート免許)」が必要です。
ZSC会員で免許をお持ちの方はご登録をお願いいたします。
ただし、ご利用はZSCの行事に限られます。

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